第564回 居留許可の取り消し

2025年3月11日、内政部移民署が、中国による台湾の武力統一を肯定する発言を行った台湾在住の中国人インフルエンサーの居留許可を取り消し、その後、当該インフルエンサーは台湾を離れました(以下、「本件事案」)。

本件事案については、言論の自由等の観点から波紋が広がっています。

社会的影響も考慮

本件事案において、移民署は、「大陸地区人民の台湾地区において親族を呼び寄せる場合の居留、長期居留または定住の許可に関する弁法」(中国語:大陸地区人民在台湾地区依親居留長期居留或定居許可辦法、以下、「本件弁法」といいます)第14条第1項第4号の規定に基づき居留許可を取り消しました。

同条項では、「国家の安全または社会の安定を害するおそれがある」場合、居留を許可せず、すでに許可している場合は、その許可を取り消しまたは廃止し、かつ、不許可、許可の取り消しまたは廃止の日の翌日から起算して1年以上5年以下の一定期間、再申請を許可しない旨が規定されています。

台湾では、憲法第11条により言論の自由が保障されており、移民署は言論の自由を尊重するものの、本件事案については、インフルエンサーの投稿内容が社会の安定に影響すると判断したようです。

日本人でも起こり得る

本件弁法は中国人の居留許可に関して規定したものですが、日本人を含む外国人の居留許可に関して、少し表現は違うものの、「入出国および移民法」(中国語:入出国及移民法)に同様の規定があります。

同法第24条第1項では、「我が国の利益、公共の安全、公共の秩序を害するおそれがある」場合(第1号)、および「善良な風俗を妨害する」場合(第13号)等に外国人の居留を許可せず、すでに許可している場合は、その許可を取り消しまたは廃止することができる旨が規定されています。

このため、台湾に居住する日本人が本件事案のインフルエンサーと同様の行為を行った場合、居留許可を取り消され、出国を命じられる可能性があると考えます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。