第440回 浮気の慰謝料に関する夫婦間の誓約書は有効か?

妻が夫の浮気を発見したため、再度浮気をした場合には500万台湾元(約2500万円)を妻に賠償しなければならないという誓約書に署名するよう夫に要求したという夫婦がいました。この夫は誓約書に署名してから3年後に再度浮気をしました。このような誓約書は有効なのでしょうか?

 浮気の代償

桃園地方法院(地方裁判所)は、このような誓約書は有効であるが、請求金額についてはしかるべき減額を行うことができると判断しました。その理由は次の通りです。

1. 夫が署名した誓約書には「私は妻に対し、会社の同僚と浮気をした私の行為につき許しを請うため、下記の事項について約束します。

一、私は深く後悔しており、このことについて妻に対し真摯に謝罪するとともに、将来にわたって決して再び罪を犯さないことを保証します。私は今後も妻を慈しみ、家族に配慮し、実際の行動をもって過ちを悔い改めることに対する私の誠意を証明します。

二、今後、私が妻以外の女性と友情の範囲を超える何らかの交流(性行為、手をつなぐこと、抱擁すること、二人きりで会うことなどの親密な行為、およびあいまいな言葉、ショートメッセージ、電話、LINE、電子メールなどによる連絡)をした場合、違反した都度、500万元の慰謝料を妻に支払うことに同意します」などと記載されていることから、夫婦双方においてすでに明確な取り決めがあったことが分かる。

2. 調べによれば、妻が提出した動画に示されている手をつなぎ、指きりをし、肩に腕を回す行為は事実であるため、妻が誓約書に基づき慰謝料の支払いを夫に請求したことには根拠があるといえる。

3. 民法第252条には、取り決めの違約金があまりにも高額である場合、裁判所は相当の金額まで減額させることができる旨が明文で定められている。夫の年間所得総額は平均400万元を超えているため、当該取り決めの金額はあまりにも不合理であるとは言い難い。しかしながら、双方の婚姻にそもそもひびが入っており、離婚について議論したことがあること、また、身体的要因により夫が無給休職であること、扶養する親がいること、および未成年の子を育てるために毎月10万元を妻に支払わなければならないことなどを考慮し、しかるべき減額を行い、400万元とする。

収入に応じて減額も

もっとも、高雄で発生した別の類似案件があります。二度と浮気をしないという類似する内容の誓約書(浮気をした夫の月給は約3万6000元、夫名義の財産の総額は約190万元)でしたが、浮気をした場合、妻に1500万元を支払うことおよび不動産の所有権を移転することを誓約していました。裁判所は最終的に、50万元までしかるべき減額を行うとの判決を下しました。

したがいまして、複数の案件でこのような誓約書は有効であると判断されているものの、賠償金額の多寡については誓約に違反した者の実際の収入に応じて決定する必要があるということになるようです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。